今回は、文系大学院の一次試験で課されることになる英語の試験について、私自身がやっていた勉強法やコツなどを紹介していきます。このシリーズは基本的に文系大学院修士課程入試をターゲットにしたものでしたが、本記事だけに関しては、英語が課されるすべての大学院受験生に参考になるかもしれません。
英語や専門試験を突破した後の面接試験のコツついては、↓の記事で解説していますので、あわせてご覧ください!
英語入試の種類
大学院入試で課される英語試験には、いくつかのバリエーションがあります。私が経験したところだと、以下のものがありました。
- ①研究科独自の試験が課される場合
- ②TOEFL ITPなどを、受験生で集まって解く場合
- ③TOEFL iBTやTOEICなどの英語外部試験を、あらかじめ個人個人で受けに行き、そのスコアを提出する場合
①と②に関しては、一次試験としてその大学院に受けに行き、③に関しては、スコアを送るだけなので、一次試験で受けるのは専門科目の試験だけということになります。ここでは、それぞれの仕方の対策について紹介していければなと思いますが、TOEFLやTOEICに関しては、その対策に関するサイトが、おそらく山のようにあります。ここでは、私の実体験に基づき、実際に使っていた教材などを、コメントと共に紹介していきます。
研究科独自の試験が課される場合
英語科目が研究科独自の試験が課される場合、その多くが長文の下線部和訳の問題です。大学受験の時に受けたような、選択肢の問題などは、あまりありません。問いの数については、研究科によってもまちまちで、そもそもの受験時間自体も60分で終わるところもあれば、120分くらい使ってやるところもあります。
出題される文章は、その研究科で研究されている内容に何らかの関係を持つものが多い印象です。ここで注意したいのは、英語試験はたいていその研究科を受けるはみんな同じ共通の問題を受けるということです。同じ研究科の中にも、いくつものコースがあることがほとんどですので、「その研究科で研究されている内容に何らかの関係を持つもの」という範囲は、自ずと広くなってきます。
逆に言うと、文系の研究科ならば、おそらくバリバリの自然科学に関する文章は、そんなに出ないのではないかと思います(たとえば、ブラックホールについてとか)。強いてイメージを挙げるとしては、センター試験の現代文に出てきたような文章の英語版、って感じでしょうか。
次に、これの対策についてです。まずは過去問を入手し、傾向を知ることが大事。試験時間と問題数から、一問あたりにかけることのできる時間を割り出しましょう。英語の読解能力・和訳の仕方自体の対策ですが、私がやっていたのは、次の三つです。
『大学院入試への英文法』(湯川彰浩、2017)
一つは、『大学院入試への英文法』(湯川彰浩、2017)というテキストをこなすこと。これは、大学院入試で要求される和訳問題などを解く上で必要となる文法知識を確認していき、その和訳の仕方のコツなども紹介してくれるという画期的な本です。
英文法については、高校生や大学受験の時にそれなりにやっていた部分もあるかと思いますが、それの復習にもなりますし、私の場合は和訳に関しては雰囲気でやっていることも多かったので、これを読んで初めて知ることも多かったです。各文法項目の解説の後に、その都度練習問題が付いているのですが、この文章達も院の入試で出そうな文章が多く、読解の練習にもなります。何をやったらいいのかわからない人は、まずはこれをやってみることをお勧めします。
TOEFLの長文を和訳をしてみる
二つ目は、TOEFLのリーディング問題を使って、その和訳をすることです。TOEFLで出題される読解は、比較的アカデミックな文章が多く、大学院の英語試験で出題されるものと似ているからです。
私自身は、先に紹介した『大学院入試への英文法』が終わったら、TOEFLのリーディングの教材などを使って、それを読む練習と和訳してみる練習をしていました。TOEFLのリーディング問題自体は選択肢の問題なのですが、そこは気にせずやっていいと思います。ただ、後述のように、わたしはTOEFL ITPの対策をする必要もあったので、普通にリーディングを解くのに加えて、和訳の練習もしていた、という感じです。
同じように、TOEFL向けの単語帳も、院試で出る文章にもそれなりに対応しているように思われるので、これも使えると思います。どのような教材を使っていたかは、この記事の以下のTOEFLの対策のところで紹介します。
『ポレポレ英文読解プロセス50』(西きょうじ、1993)
三つ目ですが、難しい構文の把握の練習として、『ポレポレ英文読解プロセス50』(西きょうじ、1993)もやっていました。これは、大学受験用のテキストとしてかなり人気&有名な本ですが、わたしは英語の能力がそもそも低かったため、院試のためにこれをやっていました。
決して解説や説明が多いテキストではありませんが、かなり実力が付きます。ポレポレに限らず、大学入試用の英語読解のテキストには良質なものが多いみたいなので、英語自体がそもそも不安とか、実力がないなと感じる人は、そういったものを活用するのを視野に入れてもいいと思います。いずれにせよ、和訳問題に関しては、その和訳の仕方のコツを知ることと、量をこなすことが大切です。
大学院の過去問はそこまで何年分も手に入らないことも多く、去年の分を直前の練習に残しておこうとすると、実際に解いて演習できるのは数年分しかない、ということもよく起きます。そのため、それに似た文章を自分で探してきて(私の場合はTOEFLの文章だった)、それなりに量をこなすようにしましょう。
TOEFL ITP もしくは TOEFL iBT
TOEFL ITPは、その研究科の受験生で集まって受けるもので、iBTのほうは、自分で申し込んで受けに行くものです。研究科によっては、iBTのスコアを提出してもいいし、指定の日に大学に行ってITPを受けてもいいよ、なんてところもあります。
その場合に、どちらを選んだ方がいいかは人それぞれです。iBTのほうが要求される項目が多く(ITPはリスニングとリーディングだけですが、iBTはそれに加えてスピーキングとライティングがあります)、その分、いろいろな対策は必要になってくる反面、先に受けておけばわざわざITPを受けに行く必要がないので、そのぶん楽になるかもしれません。もしスコアを提出するなら、どのくらいのスコアが必要なのか、などに関しては研究科ごとにまちまちで、そもそも公開されているところの方が少ないと思うので、その研究科に進んだ先輩などがいたら、聞いてみるのもおすすめです。
私の場合は、最初iBTを受けようとして勉強するも、いろいろあって間に合わず、結局集団のITPを受けることになった、という経緯があります。そのため、教材も混合しています。あえて言うなら、リーディングで出題される長文などはITPのほうがiBTより短いので、先にiBTの勉強をしていたのは、よかったかもしれません。また、iBTのリーディングは長文問題オンリーなのですが、ITPの方は文法問題のセクションがあります。これについては、そもそもTOEFLを勉強する前に、一時期TOEICをやっていた時期があり、その時の文法の演習が、役に立った気もします(TOEICの教材については、後にふれます)。
『はじめてのTOEFLテスト完全対策[改訂版]』(Wadden, P., Hilke, R., 松谷偉弘、2014)
はじめにやったのがこの本。TOEFLのことが何もわからない状態からスタートしたので、それぞれのセクションの内容の把握が出来るだけで、有難かった。すこし演習も出来る。タイトル通り、「はじめの」一歩には最適なテキスト。
『TOEFLテスト 完全攻略リーディング』(Wadden, P., Hilke, R., 霜村和久、2009)
リーディングの対策としてやった。問題演習というより、“読み方”と“解き方”を教えてくれる。最後に模擬テストもついているし、そのチャプターごとにある程度まとまった長文を読むことになる。iBTに対応しているし、ここで紹介される技は、ITPにも使える。これはかなりおすすめの本です。
『TOEFL iBT TEST リスニングのエッセンス』(Z会編集部編、2016)
リスニングの対策としてやった。解き方のコツも教えてくれるが、リスニングの問題集としても使える。ちなみに、TOEICしかやったことないと、TOEFLのリスニングは、最初は何言ってるのかもよくわからないし、時間も長いし、ナニコレ状態だけど、それなりに数を重ねていけば、案外傾向なんかもつかめてきて、すこしは解けるようになる。iBTとITPではリスニングの出題が少し異なり、これはiBT向けのテキストだが、英語を聞き取る練習という意味では、ITPの練習にも全然なる。
『TOEFL ITPテスト 完全制覇』(村川久子監修・SUNDAI GLOBAL CLUB著、2016)
ITPの対策が必要になったため、急遽これから始める。それぞれのセクションの傾向や解き方をまとめた本。先に少しふれたが、iBTとITPでは、おなじリーディングとリスニングでも、いくつか傾向で異なる点があり、それを把握するのに役に立った。見た目が分厚く、一応17日で終わるという体になっているが、案外サクサクと進むので、特にiBTの対策をしていた人は、もっと早く終わると思う。最後に実践問題として、iBT1セット分の模試が付いてくる。
『TOEFL ITP TEST 実践問題集』(Wadden, P., Hilke, R., 松谷偉弘、2011)
TOEFL ITPの問題が3セット分のっている問題集。1セットにつき、それぞれかなり詳しい解説が載っている。演習はこれで行った。おすすめです。
『完全攻略! TOEFLテスト英単語4000』(河野太一、2014)
TOEFLの単語帳。iBT・ITPの両方に対応。TOEFL関連の単語帳は、TOEICほどではなくともたくさんあるので、正直どれをやるのか迷ったが、単語の覚え方のゴロが面白いっぽかったので、これにした。合う/合わないが人によって差がありそうだが、私にはそれなりに合っていた気がする。
先に挙げたように、大学院独自の英語試験についても、この単語帳に限らず、TOEFLの単語帳は役に立つ気がします。特に、複数の研究科を受験し、かつそれぞれで要求される英語試験の型が異なる場合は、何個も何個も英単語帳をやるわけにもいかないので、そういう意味でも、TOEFLに照準を合わせて単語を勉強することは、非常に幅がききます。
TOEIC
TOEICに関しても、事情はTOEFLと同じです。自分自身が使っていた教材とコメントを掲載します。
『はじめてのTOEIC L&Rテスト 全パート総合対策』(塚田幸光、2017)
TOEICについて何もわからなかったときに、最初に購入。一通り、各セクションの問題の解き方、コツを教えてくれる。最初の一冊としては最適なのでは。
『公式 TOEIC Listing & Reading 問題集3』
TOEICの公式問題集。フルセットが二回分収録されている。解説もちゃんとしたのが付いてくる。私の場合はこれを何回か回していました。このシリーズは(今のところ)1から5まであるはず。下手に違う問題集をいろいろやるなら、同じ問題を何回か繰り返す方が、最終的な結果につながりやすい気がします。
『TOEIC L&Rテスト 文法問題 でる1000問』(TEX加藤、2017)
リーディングの文法セクションが弱いなと思って購入。1000問あるので、ボリューミー。そのため、一周しかできず。文法セクションが弱い人は、これをしっかりやれば、それなりに伸びていくはず。
『TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ』(TEX加藤、2017)
単語帳。有名どころだが、使いやすいし、安いし、何を買っていいかわからない人は、とりあえずこれを買えばOK。私も友人から紹介され購入。
注意⁉ 外部試験の申込について
もし外部試験のスコアの提出が求められている研究科を受験するならば、外部試験の成績がそれを受験してからどのくらいのスピードで帰ってくるかをきちんと調べておく必要があります。特に、TOEFLに関しては、おそらく募集要項などで説明がなされていると思いますが、スコアの提出方法がすこし複雑、かつスコアが返ってくるのにも時間がかかります。それに向けて勉強する期間と、出願の締め切り(スコア提出の締め切りが別途設けてある研究科もあると思います)に合わせて、適切な時期に外部試験の受験を申し込むことをお勧めします。
補足:時間の使い方--英語の重要さ
最後に、文系大学院入試を控える人の、英語の勉強に関しての時間の使い方についてすこし。大学院にはいろいろな入り方があるし、いろんな経歴を持った人が入って来ますが、ここからの話は、現役の大学生がそのままストレートで院を受験するときを想定しています。
仮に夏受験を受けるとすると、試験勉強をするのは大学4年の春学期ということになります。文系大学4年の春学期といえば、卒論の構想を何となく考えているくらいで、そこまでで単位を取り切っているのであれば、正直かなりの暇な時間があります。ずっと春休みが続いている感覚かもしれません。そこで、特に英語に関しては、かならず毎日触れることをおすすめします。大学受験の時だったら、高校の授業があったり、行事の準備があったり、受験で使う教科数も多いので、なかなか毎日長文を解くというのを実践できない日もあったかもしれません。
しかし、院の入試で要求されるのは、たいていの場合で英語と専門科目の二つです。英語に関しては、触れないでおくと、どんどんできなくなります。逆にいえば、コンスタントに触れていれば、その分それなりに実力が伸びてくるともいえます。いくら専門科目が得意で、研究計画が周りから評価されていても、英語が出来ないと、面接まで進むことすら出来ません。だからこそ、特に英語が苦手だなと自覚がある人は、はやめはやめに勉強を始めて、その習慣をつけていくことを、心からおすすめします。
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